今回は、対面のゼミを行う際、気を付けるべき点をお話しします。(本記事は、数学系研究室においての、黒板を使った少人数ゼミを想定して書かれたものです)(本記事には個人的見解が含まれます)
ゼミ開始前にやること
ゼミ開始前には、何をすればいいでしょうか?
実は、それだけじゃないんです。実りのあるゼミにするために、事前にやるべきことを解説します。
行間を埋める
例えば、
a<b<c が成り立つ.
という文があったとします。しかし、実際にはその結果にたどり着くまでに、様々な定理が使われ式変形が行われているのです。この、式と式の間を埋め、それを説明することが、ゼミで求められていることです。
行間を埋める作業をするために、発表する範囲の式変形は全部、自分の手で計算してみることを推奨します。
どうしても分からないとき
ゼミの準備をしていて、分からないところに遭遇することはよくあります。基本的には、自分で調べたり、考えたりして、なるべく自分で解決すべきですが、どうしてもわからない場合は、準備段階で、研究室の先輩や友人らに聞いてみましょう。同じようなところでつまづいていることがよくありますので、アドバイスをもらえる可能性が高いです。それでもわからない場合は、指導教員に相談するのもよいと思います。
ノートを作る
事前にゼミで書くことや説明することをノートに書いておきましょう。板書計画をすることで、ゼミがスムーズに進みます。
視覚化する
個人的に重要だと思っていることは、分かっている部分を図やグラフなどを使って視覚化することです。図やグラフにすることができなければ、自分の中で理解しきれていない可能性が高いです。(なので、ゼミで詰まったとき、図で書いてみて、グラフで書いてみて、とよく言われます)
図やグラフを使うことのメリットとして
- 頭の中が整理でき、自分がどこまで理解できてるか明確になる
- 発表時に、教授や他のゼミ生との理解の齟齬が起きにくくなる
- 文字を書く手間を減らすことができる
- ノートを見返したときに思い出しやすくなる
などが挙げられます。図やグラフは積極的に使用しましょう。
ゼミが始まる前に黒板を埋めておく
ゼミの中で何度も出てくる式や前回のゼミの復習、新しい内容の一部を、事前に黒板に書いておくことで、スムーズにゼミを開始することができます。私の場合は、ゼミが始まる30分程度前から黒板に書き始めて、ゼミが始まるタイミングで説明を始められるようにしていました。教室や時間などの関係で事前に書けない場合は、事前に黒板に書くことを決めておき、始まったらすぐに黒板に書けるよう入念に準備を行いましょう。
ゼミで意識すること
始まりと終わりを意識する
ゼミでは、すべての行間や書いてあることすべてを解説するわけではありません。なぜなら、すべてを解説するには、与えられる時間はあまりに少ないからです。何を説明して何を省略するか、我々は決断する必要があります。
例えば、火山に着くのがゴールの映画があります。まずは、どうして火山を目指しているのか、という理由があり、スタート地点や火山、そこに着くまでの中間地点を分かりやすく描写する必要があります。火山が遠い場合、道中すべてを描くことは不可能です。途中で迂回しなければならなくなったり、強靭な敵が現れたり、仲間割れが起きたり、と重大な出来事は丁寧に描写されますが、何も事件がなく歩いてるだけの描写は最低限で十分です。また、パート2以降は前回のあらすじも必要です。
ゼミも映画と似たような形だと思ってください。Aということを主張したい場合、どうしてAを主張したいのか、どういう条件を仮定しているのか、Aに着くまでに使う定理や補題を紹介する必要があります。また、論理を展開するにあたり、主張にかかわる行間はどの程度丁寧に紹介するのか、あまり関係ない部分はどの程度省略するのかを事前に考えなければいけません。このバランスがおかしいと、展開が早すぎてついて行けなかったり、遅すぎて退屈することになります。さらに、前回から続く内容を話す場合は、前回までの復習を入れる必要があります。
特に、始まりと終わりをどこにするかは重要なので、ゼミの前に決めておく必要があります。なぜなら、そこを意識することで、どこにどれくらい時間を割くのか、目途を立てることができるからです。映画監督になったつもりで、自分のゼミを組み立ててみましょう。
具体的に意識していること
ここでは、黒板に書く時や説明するとき、私が実際に意識していることをお伝えします。
- 黒板を広く使う
- 字は大きく早く
- 図やグラフを使う
- 余白を残す
- 色を使う
- 説明中は黒板の文字を体で隠さない
黒板を広く使う
オンラインの画面と違い、黒板には多くの情報を記述することができます。最初は戸惑うかもしれませんが、黒板は大きく使うことを意識しましょう。
字は大きく早く
発表者が黒板に書いている時間は、聞いている側には退屈な時間です。字は早く書く、ある程度書いたら話す、ということを意識して、なるべく議論に時間を多く使いましょう。
図やグラフを使う
図やグラフを使うことで、聞く側は理解しやすくなり、発表者側も字を書く時間を削減できます。図やグラフを使い、視覚的に分かりやすい発表をしましょう。
余白を残す
黒板は、オンラインの画面と違い、直接図や数式を書き込むことができます。そのため、後から書き込むための余白はある程度残しておきましょう。
色を使う
同じ色だけで書いていると、どこが重要なのか分からなくなってしまいます。重要な部分には、別の色を使ったり、アンダーラインを引いたりして、どこに注目させたいのかを意識しましょう。ただし、使いすぎには注意です。
説明中は黒板の文字を体で隠さない
説明中に黒板の文字と被ると、どこを説明しているのか、聞いている側が分からなくなります。なるべく被らないように心がけましょう。
ゼミが終わった後は
ゼミでやったことは、次の日には結構抜けています。なので、ゼミで分からなかったことや、新たに分かったことは、その日のうちにまとめておきましょう。また、次回の発表のために、その日のゼミがどこまで進んだのか、目印をつけておきましょう。ゼミで書いたことは写真に撮っておくと、反省点やよかった点が分かるのでお勧めです。
まとめ
ここまで、対面のゼミ発表についてまとめてきました。最後に、一番大事なのは経験です。最初から上手くやれる人間なんていないので…。また、人によって、ゼミのスタイルも違ってくると思います。なので、うまくいかなくてもあまり落ち込まずに、次に向けて行間をより丁寧に計算したり、ノート作りを工夫してみたり、事前に発表練習してみたり、と工夫して、自分なりのベストなやり方を見つけていきましょう。
参考文献
数学の学びを深めるために必要なのは、「わからない」と言える力 「行間を埋める」ということが詳しく解説されていて分かりやすいです。